思い出再現劇場

「1年経っても色褪せない俺節forever」


【第2夜】

4)ストリップ小屋の人々

 

♪カスバの女 を巻き舌で歌うマリアン姐さんと、その周りで妖艶というのかいかがわしく舞う踊り子さん。エドゥアルダさん、アイリーン、シャオ、橋本さん。そして遅れて加わるテレサ。

あとのオキナワのセリフにもあったとおり職業に貴賎はないとは言えど、あの場末でディープな雰囲気は少なからず心が痛くなる空間でした。楽屋でのマネージャーのあの仕打ち。橋本さんなんて濃厚なキスをされた挙句ぶん殴られる。みんな借金のカタにされているとかそういう経緯もあってここにいるんだろうな、と。でもムードメーカー的なエドゥアルダさんやマリアン姐さんを中心に、彼女たちは妙に強い。失うものが何もない強さ、あるいは逞しさのようなものなのでしょうか。キラキラ輝いた日の当たる世界とは真逆の場所なのに、出前を頼む場面ひとつとっても彼女たちは楽しそうというかどこか前向きで。(このシーン、何を頼むか?のアドリブでは、エドゥアルダさんとテレサの駆け引きで毎回笑わせてもらいました。)

 

下世話な感じの下ネタも沢山でてくるのに、どこか愛おしいような雰囲気をも感じさせてくれる不思議さが、この薄暗いストリップ小屋にはありました。

 

 

 )大野さんとの出会い

 

六角精児さん演じる大野さんとの出会い。あのシーンもなかなか良かったな、と思います。

「大野のダンナだぁーーーーー!!!」

癒しを求めて有り金で大野さんに歌ってもらう。今思えば、何気に陛下が多めにお金を出してくれたことに、皆に陛下と呼ばれる片鱗を垣間見た気がしました。

「牛や馬は歌、聴かねぇからなー。なぁダンナぁーー、俺らを人間にしてくれよぅ」・・・切ないけれど、とても人間らしい心からのセリフだったと思いました。

 

大野さんの♪暖簾 の弾き語り。飄々としたオキナワとは対照的に、すでに労働者と化していたコージの大野さんを眺める目はとても温かかった。たかが流し、なんて言葉で片付けられないような、皆の心を鷲掴みにする大野さんの歌は、スポンジのごとく自然にいろいろなものを吸い込んでいくコージの素直な心にもすーーーっと入っていく。あのシーンの大野さんにはそれこそ「いいね」をいっぱいつけたい、そんな感じでした。

群がるような横丁の面々も、皆それぞれ大野さんの歌を自分に当てはめ、日の終わりに大野さんの歌は自分のためのものだ!と奪い合う。

 

皆がこんなに余韻に浸った上で争っているというのに、ドサクサで大野さんのお財布を抜き取るオキナワ。相変わらず手癖の悪いオキナワ。さらにそのお金で景気のいい店へ行こうとまで言い出すオキナワ。そしてそこで世間知らずのコージは、とうとうストリップ小屋で出会ってしまう・・・運命の人に!!!

ここは、最終的に「テレサとコージをまた引き合わせてくれてオキナワありがとう!」と言わなくてはいけないのかもしれませんが、そのきっかけが大野さんのお財布という点もまた、オキナワの憎めないクズっぽさ。でも私は、そんなオキナワが嫌いじゃないぞ!とまた思うのでした。

 

 

)再会

 

ストリップ小屋での踊り子たちの売春、下世話な入札形式。エドゥアルダさんの売りから始まった、あのピンク色に染まったいかがわしい空間は、純朴なコージにはとてつもなくショッキングだったと思います。事の真相を理解したあとはオキナワを軽蔑し、目の前の出来事に見向きもせずただ足をギュッと握るように堪え、「おらぁ、けぇるわー」と立ち去るコージ。そんな中エドゥアルダさんは野球帽の変態男に買われていき、次に登場したのは下着姿のテレサ。テレサがエドゥアルダさんよりも明らかに高値で一晩売られようとしていたことも妙にリアルでした。

そしてテレサの姿にコージが気づいた!!!!!!!

「い、いちまんろくせんえんっっ」

「お、おらがぁ、いちまんろくせんえん、はらうべ」

あえてこう、平仮名で綴りたくなったセリフでした。群がっていた他の客はテレサの身体を「買おう」としていたけれどコージだけは違う。ただ「守りたい」。

あの横丁での出会いと同じ。ただただ、救いたい。

 

男たちの欲望とくだらないプライドでどんどん競り上がってくテレサの値段がとても生々しい中での

テレサ「ワタシ、貸します!!」

コージ「ごまんっっ!!!!」

・・・もはやそこからテレサとコージ人の世界となればよかったのに、悲しいかなコージには持ち合わせがない。結果として当初競り落とそうとしていた助平さんに持っていかれようとしてしまう。でも諦めきれないコージは「歌で堪忍してけろ!おらが、万円分歌うべ!!」と。コージの思考回路らしいといえばコージらしい。ただの素人にすぎないのに、このめちゃくちゃな理論で闘おうとするコージが、もうバカなの??と思えてしまう一方で、あまりにも純朴すぎるのがたまらなかった。そして助平さんが煽るように「いいよいいよ、俺聞いてみたいもん、万円分の歌ぁぁぁ??」と予想外にも許してくれたのをいいことに、歌うは ♪北国の春

でもやっぱりまた最後まで歌えない。できないコージへの愛おしさが増し増しになっていくのを感じました。そこからは大乱闘。売春オークションに来ていた他の客たちまで巻き込む形でぐちゃぐちゃになりながらも

「あのふーるさとへ 帰ろかなーー 帰ろーぉかなーー」

コージの力強い歌声。話が展開するにつれ、私だけでなく多くの観客がこんなコージを応援するような気持ちで見入っていたのかな、と思います。

 

楽屋へテレサを逃げ隠したあとコージに飲み物を手渡すテレサの顔はとても優しくて。あんな生き方してきて、こんな優しさに触れたらそりゃあ惚れるだろうなぁ・・・そう思いながら、この束の間の平和な空気を見守っていました。

野球帽の変態男にめちゃくちゃにされたエドゥアルダさんが乱れて戻って来たことで、コージは悲しい現実を目の当たりにしてしまうけれど、だからこそこの愛おしい人をこの世界から救い出したい。その、純粋な気持ちだけでこのあと駆け抜けていくコージが、私にはやはり愛おしくてたまらない存在なのでした。

「ふるさとってどういう意味?」

「んんーーなんて訳したら・・・わがんねぇなぁ」

「やめてっ!!その歌やめて!!!!」

「ふるさとはねぇ、帰りたくても帰れない場所って意味なんだよ、あんたでいう・・ウクライナ?」

「いや・・・この歌は・・・・・・」

「あんたもさぁ!中途半端に優しくしないでもらえるかなぁ???こっちはとっくにそんな心捨てて戦ってんだよ!!」

「お前があそこで歌えてたら、ちゃんと伝わったよ」

・・・もう、ひとつひとつの場面とセリフが年越しですが空気感と共に蘇ってきます。年前私はあの場所にいたんですね。嗚呼もう一度だけでもいい、みんなに会いたい。

 

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