★思い出再現劇場★
【第6夜】
16)ナホ先生とのレッスンの日々を送るコージ、荒れるオキナワ
「好きなのよー 好きーなのよーーっ くちーづけをーー してほーしかーったのーーー 切なーーくてーーー っ 涙が出てきーちゃうーーーー」
上手側に設置された階段を登りながら歌い、投げキッスやお手振りが満載。ナホ先生のちょっとしたオンステージ。階段を上がりきったそこはキーボードが置かれたレッスンスタジオ。
歌い終わったナホ先生は「こんな感じーっ、にゃは♡」と途端にぶりっ子要素を醸し出してくるのですが、もしこの舞台を観に行った方々にアンケートを取ったとしたら間違いなく大好きなキャラクターとして圧倒的に上位に食い込むであろう愛すべきナホ先生。
目をキラキラさせながら「じゃ、歌ってみよっか??」と促すナホ先生に対してごく普通に「はい、先生」と返事してしまうコージ。
「んっ、ん?う~ん?うん、んーー?・・コージくん??ここに通い出してどれぐらい経つっけ??」
「んん、うーん?・・コージくん、そろそろ先生って呼ぶの、やめてみよっかぁ?」
「じゃあなんて呼べば・・」
明らかに困り果てるコージに対し、まるで水を得た魚のごとくキャピキャピしながら、待ってましたとばかり
「えっとねぇ!んとねぇーー・・・ナ・ホ♡」
さらに「ううんううんううん!ナ・ホ・・♡」
艶めかしい口調でコージに迫る・・ナホ先生の片想いが判明した瞬間でした。
そこへ戌亥さんと寺泊行代ちゃん登場。ナホ先生のお尻も軽くタッチしながら寺泊行代ちゃんを連れ立って戌亥さんが現れた理由は、なんとデュエットデビュー?!
「おいおいっ!コンビ組むんだから仲良くやれよぉー!!コンビが仲悪いのは昭和までの話だー!平成も2年目なんだしよぉー!」
そんな戌亥さんに対して
「その平成に、演歌????」
と露骨に不服そうな行代。そしてコージもたまらず「あのぅ・・・コンビって・・・どういうことだべか??」と。
「お前は行代とデュエットでデビューするんだよ!!」
「・・デュエット!?」
コージにしてみれば、だったらオキナワと組ませてくれたらいいじゃないか、という話。でも戌亥さんの思惑は、その後ヒット曲に恵まれない寺泊行代への起爆剤のような一種の企画として、田舎から出てきたビジュアル良しの純朴な青年を利用しよう・・・まさにそんな感じでした。
一方で、演歌デュエットという、アイドルとしての王道からも明らかに外れてしまうスタイルを提示され、全く乗り気にもなれず拒絶反応をしっかり示す行代。そんな彼女を戌亥さんが連れて去ったあとレッスンスタジオに残るは、ナホ先生とコージ。
とにもかくにもコージのことがお気に入り!なナホ先生は再びコージに接近(笑)、
「前から思ってんだけどぉーー、その背広・・・・真夏にそんな暑そうなのを着てたら、おかしくないー??一回脱いで歌ってみたら???」
そう言って背広を脱がせようと試み、さらには
「それに・・・訛りだって・・・・・」
とNGワードを連発してしまう。ここまでナホ先生に若干タジタジ気味だったコージも、流石に
「おらぁ、故郷(くに)の言葉もこの背広も、恥ずかしいとかおかしいとか、思ったことねえべ??」
ときっぱり。
もうナホ先生、すでにコージに拒否されてるから・・ナホ先生ドンマイ!!という状況ですが、当のご本人は
「んん・・もぉーー、ウブなようで頑固!!!そういう人・・・スキっっっ!!!ナホって呼んでっっ!!」
全く諦める気配もなく、めげないナホ先生。対岸から見る限りはいいけれど、当事者のコージくんは油断したら食べられるかもしれないから・・とにかく気をつけて!そんな濃いめのキャラ、ナホ先生はやはり◎の存在でした。
そして先ほど出て行った戌亥さんと行代。喫煙所で話す2人は明らかに特別な関係。
「そうだった、そうだった。あんたに教えてもらったタバコだった。」
付き合った男からタバコを覚える・・・ありそうな展開。
「お前がアイドル崩れはもうイヤだ!!って言うからやってんだろ!!」
そう言われても、アイドル路線から外れた演歌でデュエット、しかも誰なのあの子?という状態。かつては一世を風靡した(のかな?)アイドルならば、プライドだって許さない。そんな行代に対し
「CMソングだ!!引越屋の!!!!」
そう言い放った戌亥さんの言葉に色めき立ち、次の瞬間
「ひっこしをーー するならぁーー おしえてよぉーーー」
サビを聞いて一気に冷める行代。
「それ、全国区じゃないよねぇ??流れるとしても地方局のラジオくらいだろうし・・・タイアップだと営業かけづらいしー、デュエットだと紅白出づらくなるしー」
ずっと過去の栄光が忘れられない行代。戌亥さんにベテランの悪い癖だと言われ不満げになる行代に
「板の上で見世物になるには、隙間のある人間じゃなくちゃならねえ!その隙間に、客は自分の思いを乗せる?託す?・・・・(中略)・・・行代!コージと組め!あいつは隙間だらけだ。あいつの隙間には人が集まる。お前は、それを踏み台にしていきゃあ・・いいんだよ・・・・」
2人は腐れ縁なのかもしれない。でもデビューのころからずっと見てきた、そして公私ともに大事にしてきた人にもうひと花咲かせてやりたい。ストリップ小屋ではひどい小屋主だった中村まことさんは戌亥さんになると途端に情のある人。ここにもまた、大事な人のことを一番に考える男が1人いたのでした。
17)失意のオキナワ、そしてテレサの苦しみ~後半~
そしてもう1人。大事な仲間のために自ら身を引く、そんな行動に出たオキナワは街を彷徨っていた。空き缶集めで日銭を稼いでいた殺し屋さんのおっちゃんとたまたま遭遇したけれど、明らかにコージやテレサと楽しく過ごしていた頃の姿ではない。
「オキナワぁー、お前はあの横丁じゃあしっかり者に見えてたけど、俺たちと同じハンパ者だってわかってたぜ?いつでもあの横丁に帰ってきていいんだぞ?」
深くは聞かないけれど優しいおっちゃんの言葉に
「・・・気軽に優しくするなよ、おっちゃん。これでもそういう言葉信じちゃう人間なのよ。信じて裏切られて、人並みに傷ついて。いけねえいけねえ・・俺は犬コロだった、って気づくわけ・・」
そう言い捨てるオキナワ。
コージやテレサと出会い、まぁ多少の手癖の悪さはあるけれど根は優しくてみんなのリーダーのような存在。それがオキナワという男だったのに、この人も壊れてしまった。オキナワの遠吠えがとても悲しく響いていました。
その頃コージはというと、相変わらずレッスンの日々。「コージくん、その背広のせいで売れなかったらおばあちゃん悲しむよ???訛りのことも一緒!」
そうナホ先生にまた言われて、ずっと着ていた背広をようやく脱ぐコージ。そしてコブシをきかせながら歌うは ♪一番星ブルース
「男の旅はぁ 一人旅ぃ 女の道は 帰り道ぃー、しょせん通わぬぅー 道ぃーだけどぉー 惚れたはれたがぁー 交差点んんんーー 」
コージが上手側の上のレッスンスタジオの柵から乗り出すように力強く歌っている階下では、サンドイッチ工場の米村課長とテレサが現れ、街の中に消えて行く。そして次に現れたのはチンピラ風情の借金取りに落ちぶれてしまったオキナワの姿。
「あぁぁぁーーーー あーあぁぁぁーーっっ 一番星 空からぁーー 俺の心をぉー 見てるぅーだろーー」
レッスンスタジオのコージ、米村課長と過ちを犯そうとしているテレサ、昔のダメな頃に戻ってしまったオキナワ。三者三様の姿が、コージのソウルフルな♪一番星ブルース をBGMに駆け抜けていく。
「やっぱりできませんっ」
バスローブ姿で逃げるテレサ。
「ショバ代は払ったじゃないのぉー!」
逃げつつも噛み付いてくるオカマを蹴り飛ばす容赦ないオキナワ。オカマから白い粉を奪い取りさらに暴力を振るうオキナワをようやく仲間が止めようとするも、歯止めが利かない。
夏の暑い夜に2本のビールであんなに楽しそうだった、いつもこの3人は揃いも揃って、自分以外の2人のことばかり考える、そんな優しい人たちだったのに。どうしてこんな風にみんなこんな悲しいことになってしまったのか。
「ガキの頃なら願かけるぅー そんな習慣(ならい)もー あったーけどーー 今じゃ行く末 見るーようなぁー 星の流れのぉー 儚さよーーっ あぁぁぁーーーー あーあぁぁぁーーっっ 一番星 消えるたびーー 俺の心がぁーー 寒くなる」
「お前のカレシもだめになるぞ!!!」
「いるんだよねぇー、ストレス解消のために仕事するやつ。危なっかしくて見てらんねえんだわ!!」
テレサもオキナワも、いつの間にか。身も心もボロボロになってしまった。
「あぁぁぁーーーー あーあぁぁぁーーっっ 一番星 消えるたびーっっ 俺の心がぁーー 寒くなるーーー」
歌いきったコージにナホ先生は厳しい。
「力が入りすぎぃーーっ」
背広をもう一度羽織りたいというコージに対して
「そんなにおばあちゃんのことが大事??コージくんさぁ、自分の思いだけで精一杯な人でしょぉ?余計な思い背負い込んでちゃ、持たないぞっ!」
そう言われて何も言えなくなってしまう。
嗚呼コージ、今あの2人は大変なことになってるんだよ!お願いだから助けて!!!
そう叫びたい衝動を抑えるのに、あの時の私は必死だったように思います。
18)初めての夜
楽しく酔っ払ったような北野先生御一行と、仲間だったチンピラにボコボコにされたオキナワが再会するシーン。木の棒のようなものを杖代わりにした怪我だらけのオキナワは、立ちションする北野先生たちに「通報、しちゃおっかなー??」と軽く絡んでいき、追い払おうとした大橋マネージャーに押された風を装いうまく倒れる。これは当たり屋ちゃんに教わったスキルなのか、とにかく全治3ヶ月だとさらに脅しにかかる。挙句、さっきオカマから奪い取った白い粉をも悪用して、北野先生を本格的に脅迫し始める。もう堕ちるところまで堕ちてしまった、そんな姿がとても悲しく映りました。何を思ったのか、オキナワを自分の家に連れて帰るという北野先生。してやったり、そんなオキナワでしたが、後々になって北野先生の方が明らかに上手だったとわかる・・でも一旦はストーリー通りに進めていきますね。
雨の夜。真っ暗なアパートで1人佇むテレサ。これは米村課長との過ちを犯し「かけた」夜だったのでしょうか。帰宅したコージがどうしたの??と優しく問いかけるも、真っ暗な中で声の表情が曇ったままのテレサ。それに気づく優しいコージ。そして
「コージ、なんで抱かない??」
「抱くって・・・何を?」
「ワタシを」
「へへへ・・おかしいべ。オキナワがいるのに・・」
「もういないよ??」
・・・
言葉がうまく出てこないコージに対して、寂しそうに冷蔵庫から缶ビールを取り出してその場をリセットしようとするテレサ。そんなテレサを見て慌ただしく白いタンクトップとトランクスと靴下という格好になるコージ。
「ちょ、ちょっと待って!!!こぼれる・・から」
と台所にビールを置きにいくテレサ。
そのまま、2人は初めてなのかな、キスをして。優しくテレサを横たえて馬乗りになり再びキス。薄暗い中でゆっくり、でも優しい中でも少しだけコージは焦っているような、そんな抱擁。そんなコージの全てを受け入れようとするテレサ。
ただ突如、あの売春オークションの一場面がフラッシュバックして行為に集中できなくなり、はっっと跳ね起きて逃げてしまうコージ。何もかもを察したテレサは悲しかっただろうな・・。
「ワタシ、キタナイ???売春婦のカラダは汚くてイヤ?ずっとそれで抱かなかった???」
そう言われて何も言い返せなくなったコージに
「黙っちゃった・・」
さっきコージが脱がそうとしてくれたワンピースを勢いよく脱ぎ去り、そっぽを向くように布団に入ってしまう。
「嫌なんてことは絶対ねぇ!!それは絶対にねぇ!」
「でも・・勃たない!!!!」
真剣に愛し合っているからこそのトラウマ。わかっているからこそ、コージを責めてしまった・・そんな自分自身のことがテレサは悔しくて辛かっただろうな・・。
「・・いいんだよ???コージはデリケート、だから。頭に・・浮ぶよね??ワタシがどんな仕事をしてたか・・」
泣き出しそうになりながら口を開くコージ。
「情けねぇ・・・こんなに自分のちんぽ 情けねぇと思ったことはねぇ。だって、すっげえ抱きてぇんだ!!おめえを!!」
立ち上がって自分の股間を拳で殴りつける。
「コノヤローっっ!!いうこと聞け!!!あっ・・」
力加減を考えずむちゃくちゃなことをしてしまい、痛みで座り込んで苦しみながら
「抱けっからっ!!!・・ちんぽがなくても抱けっから。おらぁ、おめえのこと、なんもかんも抱くから。今だけじゃねぇ、過去も未来も全部抱くから。抱けっから!!!」不器用で、生きるのか下手くそで、貧乏くじばっかりで、でもただひたすら誰よりも優しい。一番幸せにならなくちゃいけないような人。コージもテレサも、お互いの人生は全く異なる環境でここまで来たけれど、この人たちは2人とも揃いも揃ってそういう人。きっと魂と魂で共鳴するかのような運命的な2人。出会うべくして出会い、ようやく身も心も全てが繋がった、そんな切ない夜だったのかなと思いました。