★思い出再現劇場★
【第9(最終)夜】
25)名誉挽回のイベント前座の日、テレサは強制送還の手続き中
下手の階段上には、ステージ衣装ではないマリアン姐さんとアイリーンと橋本さんがそわそわした感じで誰かを探している様子。そこへ聞こえてくる男性の声。
「ほら・・・・こっちこっちー!!テレちゃーん!!」
「テレちゃんさん、こっちですー」
声の主は先日の警察官、あの後も和気あいあいとした取り調べの日々だったと思われる。その声とともにワンピース姿のテレサが現れ、駆け寄って階段途中で抱擁しながら再会を喜ぶテレサとアイリーン、そして橋本さん。階段の上ではマリアン姐さんだけが手すりにもたれる形で少し気持ちを抑えているような様子。
「テレサさんのおかげで、外国人ブローカーの壊滅に至りました。それなのに、結局強制送還になってしまい申し訳ありません・・・・まだ少し時間があります。短いですがご友人との時間を楽しんでください!」
そう言って警察官2人が去った後、テレサを囲む形で久々の水入らずの時間を喜ぶ彼女たち。
「他のみなさんは・・・?」
「エドゥアルダさんはパスポート切れてたし、シャオはそもそも偽造パスポートだったからねぇー。まっ、ここのどっかにいるんじゃない???」
橋本さんの明るい声を聞くも、責任を感じたのか少し寂しそうなテレサは
「でもね!!あそこにいるよりはずーーーーっとマシだよ!!テレサのおかげであたしたち解放されたんだから」
というアイリーンの言葉に表情が穏やかになる。
「ほら!!姐さんも!!!」
そう促されて、ようやく振り返るマリアン姐さんに駆け寄り、抱き合うテレサとマリアン姐さん。
「・・・あの男はどうしたんだよ!!ここに呼ぶべきなのは、私たちじゃなくて、あの男でしょう???」
再会の嬉しさ、でも肝心のコージがいないこと、そしてまもなくかつての仲間が強制送還されるという現実。この気持ちをどこに着地させればいいのかわからない・・マリアン姐さんはとても複雑だったと思います。
「ここにいる間じゅう、いつも・・・いつもいつもいつも・・・いつもいつもいつもいつも、頭の中でコージの歌が、鳴ってました」と幸せそうな表情で話すテレサに
「だったら!!!」と詰め寄るマリアン姐さん。
「でも、会うのは・・怖いです」
少し寂しそうに涙を浮かべたような顔で答えるテレサに対し、やはり悔しそうなマリアン姐さん。
「でも・・・呼んでも来られなかったみたいよ??・・(胸元から紙を取り出しながら)・・・コージくん、今日これに出るみたいだから」
そう言って橋本さんが差し出したチラシを覗き込む彼女たち。
「プラネット・・ギャラクティカ???何これ??全然関係ないじゃない!!!」
そうアイリーンが突っ込むも、冷静な橋本さんは
「これこれーっ!! “前座 海鹿耕治”って・・・コージくんのことでしょう??」
プラネットギャラクティカ。そういえばストリップ小屋の控室で彼女たちが和気あいあいとしていた時にラジカセから流れていた男性アイドルソングがありましたが、まさかこんな形で突然伏線を回収してくるとは・・・・さすがです。
舞台中央にイベントのリハーサル進行を担当するADさんが登場。
「海鹿耕治さん、入られまーーす!」
下手の奥から戌亥さんに続いて不安げなコージも現れる。ADさんから段取りの説明を聞きながら、何を歌うのかという話に。事前に提出したカセットテープ(まだカセットの時代とは・・・懐かしい!)について、
「あぁ・・なんか30曲くらい入ってましたけど・・・」というADさんの答えに、投げやりな感じで
「コージ、お前、何がいい??」と雑に問いかける戌亥さん。
「お、おらは何でも・・・・・」と少しおどおどした感じで短く答えるのが精いっぱいのコージ。
穴埋めの前座。でもこの際、もう穴をあけることさえなければ何でも構わない・・・そんな感じの戌亥さんは
「何でもいいんだとよー」と軽く答える。でもそう言われて困るADさんは
「何でも、と言われましてもー・・・」
「じゃあ1曲目で」
・・・こんな適当な形でコージの選曲が決定。なんとも寂しい話ではあるものの、戌亥さんのプロダクションはおそらく先日の料亭での失態による損害が大きく発生したと思われるので、コージごときにそこまで手間や時間はかけられない、といったところでしょう。
そこへ絵に描いたような装い(ニットを前で結んだテレビマン・・)のプロデューサーが上手から現れた途端、戌亥さんの態度は豹変。
「びっくりしたよぉー、行代が出ないなんてーー!」
「ほんっとに申し訳ございません!今日はこの、コージが精一杯、努めさせていただきますのでー!!」
へりくだるような口調の戌亥さんに合わせて頭を下げるコージ。
「この子で大丈夫??」
「このくらい無名の新人のほうが、プラネットさんの引き立て役になると思いまして・・・」
「あぁ、このあと天気が崩れるみたいなんだよねー」
「あ!!それでしたら、うちのコージはリハ無しで、ぶっつけ本番でいきましょう!本番も一番が終わったら、ブチっと切っていただいて構いませんのでーー」
「そう!じゃあヨロシク頼むよ!!」と、当のコージを無視しながらこのあとの段取りが決まっていく。そして
「あ・・それでですねぇ・・・うちの行代を・・・」という戌亥さんのバーター営業(と言えるほどでもないが)は
「無理無理!!」というプロデューサーの一言で瞬時に失敗。それによる八つ当たりではないとは思うものの
「せいぜい、ご迷惑をおかけしないようにやれよ!!」と捨て台詞のようにコージに言い残した戌亥さんはプロデューサーの背中を追いかけていく。ひとりになったコージはその場で立ち尽くすように、少し心細げに、さらには少し悲しそうに笑うような表情を見せながら「・・はい・・」と答えて奥へ去っていく。
26)豪雨の中で・・・
いよいよ本格的に降り始める雨。イベント会場ではスタッフが誘導する中で、客席の通路や舞台の上手・下手それぞれの上に、色違いのキャップをかぶりデコレーションしたうちわを手にしたプラネットギャラクティカ(以下 プラギャラ)のファンの姿。ある時は横丁の住人、ある時はサンドイッチ工場のパート、またある時はストリップ小屋の客・・・。さまざまな役に扮しておられたカンパニーの皆様が、それはもう楽しそうに女装で好き放題わーきゃーされていたシーンです。客席の通路に出ておられた方々は特にハイテンションで、
「やだぁー!降ってるぅーー!ヤン坊もマー坊も何も言ってなかったわよ!!ねぇ???」
と上手側通路ではすぐそばの観客に声をかけたり、先日のコンテスト優勝者であるヨシコちゃんにおいてはステージに上がってしまったり。とにもかくにも、やりたい放題大騒ぎな面々。そして、
「みなさーん!お待たせしましたーー!いよいよ!プラネットギャラクティカの登場です!!!」
(キャーーーーーと黄色い大歓声)
「・・・の、前にぃぃー!!!」
(ざわざわ)
「フロントアクトとして、演歌歌手の海鹿耕治さんに歌っていただきますっ!」
イベント司会者を演じる後藤ようこちゃんのとても良く通る声が響き渡った途端、場内のプラギャラ女子たちから一気にブーイングが巻き起こる。
そんな中、不安げにステージ中央のスタンドマイク前にコージが出てくると、四方八方から
「誰だよ!」「早くプラネット出せよぅ!!!」という野次とともに、空き缶やらゴミが飛び交う。
コージにとって、とてつもなくアウェイな状況。
司会者が慌てて転がった空き缶を拾い、プラギャラ女子たちに向けて
「モノは投げないでください!」と悲しそうにお願いするも野次は減る気配なし。もうどうにでもなれという感じで
「では、張り切ってどうぞーーー!!」とかなり無理やりな形でコージの出番が始まる。
「・・・あ、海鹿・・・耕治です・・・では・・・聞いてください・・・カラオケの一番めに入ってた曲です・・」
不安げな声色のコージに対し
「カラオケの一番めって、なんだよ!!」という、もっともな野次が飛ぶ。イントロが始まろうがブーイングは一切収まるわけではなく、ただただ雑然とした中で ♪星影のワルツ を弱々しく、ぽつりぽつりと歌い出すコージ。
その時、下手の観客席前方から聞き覚えのある声!!
「おい!!お前ら!ちゃんと聞けよ!!」
声の方へ目をやると、ギターを背負ったあの頃のようなオキナワの姿。(ちなみに私はオキナワが通る、あるいは立ち止まる真横の席に何度か入らせていただくという幸運を得た観客の一人です。)
乱入者を止めようとするスタッフもお構いなしにステージ上に上がってきたオキナワは
「あいつ、もっといい歌、歌えんの、知ってっからさ!!!」とその場で唯一、コージの味方。まさにそんな状態でした。
「・・オキナワぁ・・・・」
「ほら、コージ、歌えよ!!」
「オキナワ・・・もういいから・・・・」
そんな彼らのよくわからないやり取りを見せられ、業を煮やしたプラギャラ女子たちのブーイングは当然収まらない。
何とか ♪星影のワルツ の一番を歌い終えて、申し訳なさそうに
「すみませんでした・・・」と頭を下げてステージをあとにしようとするコージに、オキナワは大きめの声で
「コージ!!あの歌、歌え!!」と、そもそもこれが前座であることも知ったこっちゃない発言。それでもやはり弱気なコージは去っていこうとする。その姿に先程までブーイングだったプラギャラ女子たちは嘲笑するかのごとく
「はーぃ、お疲れ様でしたーー」と、心にもない皮肉の言葉をおくり、拍手がパラパラと起こる。
そんな状況に口惜しそうなオキナワ。そしてコージがいよいよステージからはけていこうとしていたまさにその時、
「シャラーーーーーップ!!シャラァァァァァプ!!!!!」
また別の、聞き覚えのある女性の声。
舞台上段に現れたのは、マリアン姐さん、アイリーン、橋本さん、そして・・・
「テレサぁ!!!!!!!!!」
その愛おしい人の姿に、反射的に足が動いたかのように、テレサがいる方へ一歩。
「どうして??まだ、日本にいたんだか・・?」
コージの声、日本にいたんだか?の声が優しすぎて、私はこのあたりからいつも涙が溢れてしまっていました。
「取り調べ、受けながら、いつも、頭の中でコージの歌が、流れてた・・」
「いつも・・?」泣きそうに、でも優しく微笑みながら尋ねるコージ。
「いつも、いつも!いつもいつもいつもだってさ!!」
マリアン姐さんが乗り出すように力強く叫ぶ。
その言葉だけで心がいっぱいになったかのようなコージに
「さっき、久しぶりにコージの歌、聞いたら、ダメになってた!!さっきの歌、歌詞のわからないところがあっても、前はわからなくても、気持ちは伝わったよ?」
テレサの訴えるような言葉に、見上げながら聞き入るコージ。
「・・・コージには、コージのことだけがんばってほしくて、私のために何かをがんばるコージは見たくなくて。私は私のことをがんばるって・・じゃあ私って?って思ったり・・して」「うまく言えないよ!!!」
言葉がうまく続かないテレサ、でもオキナワが背中を押す。
「テレサ!!全部言えよ!!うまく、言えなくていいから!!!」
オキナワのその言葉に、
「・・あーーーー!」
「ぁぁぁああああーーーーー!!」
呼応しながら泣くように叫ぶコージとテレサ。
目の前で一体何が起きているか理解できないプラギャラ女子の、水をさすような
「何これ??なんなのぉ???」
という言葉すらもぶった斬るように
「それっ!!さっきの歌!!!さんっハイ!!」
テレサに力強く促されたコージは、スタンドマイクに向き直り
「今でーもぉー 好ぅきーだぁーー!!!死ぬほーーどぉにーーーー!!!」
さっきの弱々しかった♪星影のワルツ と同じ曲、同じ人の声とは到底思えない。そんな心の底からの想いがどーーーんと飛び込んでくるようなワンフレーズを、コージは歌い切る。
「今わかった・・さっきの歌に足りてなかったもの、それは私、私です・・。コージは私とコージでコージだから。だから、私がいないとコージの歌じゃない!!私も、コージと私で私だから、コージがいないと私じゃない・・」
そのテレサの言葉で、オキナワの方を振り返るコージ。
オキナワもコージを見て頷いている。
「この歌・・テレサと一緒に作ったんだべか??」
「違うよ?俺ひとりで作った!」
コージの目に力が入る。そして阿吽の呼吸のように
「オキナワ!!!!」
「あいよ!一発、カマしてやろうぜ!!」
よっしゃ!とばかりにギターを構えるオキナワに
「・・ひとりで背負わせてくれべしゃ!!」
覚悟を決めたコージの姿に、親友オキナワは
「ほらよ!安物のギターだから濡らして構わねぇぜ!」
と粋に答えてくれる。
雨足も強まってくる中、再びスタンドマイクに向かうコージ。
「もう一曲、聴いてください!!!」
ポケットにねじ込んでしわくちゃになっていた楽譜をマイクスタンドに引っ掛けるように付けるコージ。
もはやプラギャラ女子の野次も投げつけられるゴミすらも、何一つ気にならない。
♪ひとりで生きーていけるのとーーー
強がり離した手だけれどーーー
夜と 朝のぉー 境目あたりに見るぅ夢でー
お前の名前を呼んでいたーー
おーーぃおーーぃねぇ
届いていーるーかーーぃ
もーっと傍まで来てくーれーよー
心の中まで入っておーいーでーー
俺がぁーーー 俺という時はー
俺とーー お前で俺だから
俺のーーー 俺節ぃーー お前節ーー
一番が終わる頃には、私は毎回涙でよく見えなくなっていたように思います。降りしきる雨という演出の中で、時にはマイクの調子が悪くなったりする公演もありました。それでも安田章大さんが長丁場の舞台のクライマックスのこの歌を、心のままに力強く歌いあげておられたその姿や声、全てが今も、脳裏と耳奥にしっかりと残っています。
♪何でもわかってくーれーるーからーー
必死で隠したこーとーだーけーどーー
くじけー まみーれの暮らしの中でー
お前のかげーを さーがしてたー
おーーぃおーーぃねぇ
どこまで行ーこーぅーー
もーーっとずーーっと遠くまで
黙ったまんまで歩こーよ
俺がぁーーー 俺という時は
俺とーー お前で俺だから
俺のー 俺節ぃーー お前節ーーー
俺のーーーっ 俺節ぃーーーっっ
「すいません!!!!!!・・飛行機の時間です・・」
突然引き裂くような、無念そうな警察官の声。
柵から食い入るようにコージを見つめながら聴き惚れていたテレサはふと静かに立ち上がり、最後に微笑みながらコージに投げキッスを。そして警察官とともに立ち去る。
舞台の真ん中には豪雨の中でギターを弾き、最後まで愛する人のために渾身の歌を届け続けたコージの姿。その頬に伝っていたのは、あれは、決して雨粒だけじゃなかった・・ですよね?
♪おまぁぁ・・えぇ・・ぶぅ・・・しぃーーーーー
いつの間にか静まっており、いつの間にか拍手がパラパラと起きる。そしていつの間にかその拍手は盛大になっていて、その真ん中でびしょ濡れになったコージはゆっくりとお辞儀をする。
この時のコージは、スポットライトのせいもあったと思いますが、ただただ神々しいと感じながら私は涙が止まりませんでした。
コージが歌う後ろで柱にもたれかかるように聞き入っていたオキナワもまた、千秋楽のあの日、涙を浮かべていた・・・。そのことも忘れられない思い出です。
27)そして再び横丁へ
どこかから拾って来た新聞を読み上げる横丁の住人たち。いつもの横丁。彼らの多くも、仲間であるコージの晴れ舞台を有り金はたいて見に行っていたらしく、コージのドラマチックなあの歌唱に魅入られて大興奮している様子。
なんて書いてある?コージはニュースになったのか??とひとしきり騒ぎながら読み進めていくも
「・・これからの活躍が期待される新人・・・・5人組アイドル、プラネットギャラクティカであった・・」
もちろん前座でのあの出来事に触れているような紙面などどこにもない。
「なんでコージが載ってねぇんだよぅ!!」
「あんなにすげぇ歌、歌ったのによぅ!!!」
まぁ、載ってるわけがない。むしろ悪天候の中、本来の主役がおり、前座というピンポイント登板という立場にもかかわらず、時間も無視して盛大にやからしたと言っても過言ではないレベルの出来事。
でも自分たちの仲間があんなにたくさんの観客を前に、ライトを浴びて歌っている姿は思い出してもやはり誇らしくて仕方がない。
彼らもまた、コージのことが好きでたまらないのだ。
「そういや、あいつら、どこ行ったんだよ??」
・・覗き魔さんの双眼鏡が再び活躍する瞬間。
「おぃ!!来たぞぉーー!!横丁の星だぁ!!!!」
横丁の奥から、あの背広を着たコージとオキナワが楽しそうに話しながら帰ってくる。
「お前、新聞なんか載るわけねぇだろ!」
「だどもぉ・・ばっちゃんがぁ・・」
なんだかとても幸せそうな、嬉しそうな2人。
そんな2人に横丁の住人たちが駆け寄る。イベント会場から拾ってきたのか、プラギャラのうちわを手にしている住人の姿もある。
皆それぞれあちこちから持ち寄った新聞を手にし、コージとオキナワを中心にとにかく誰もが嬉しそうに笑っている。
歩きながら舞台の真ん中あたりに自然と促されるように立ったコージとオキナワ。
コージは手にしていた新聞を高く放り投げる。(それが陛下の頭にワサッと乗っかって笑った日もありました・・)
その姿に住人たちも歓声をあげ、コージとオキナワは2人揃って顔を見上げる・・・
♪みれん横丁のテーマ のサビが流れるそこは、まるで本物の虹がかかっているような錯覚を毎回覚えたほど、ただ人が温かい、決してハッピーエンドではないのに、とにかく愛おしさが溢れた空間でした。
2∞)あとがき
赤坂のACTシアター、そして大阪のオリックス劇場。昨年の5月の終わりから約1ヶ月の間、私はたくさん足を運びました。
これまで様々な舞台作品やミュージカルを観てきましたが、この俺節ほど繰り返して通うこととなるような作品は、おそらくこの先の人生において、きっともう現れない気がしています。何度も観劇させていただいた結果として、ストーリーはもちろんのこと、セリフもほぼ丸暗記するに至りました。あまりにも大好きな作品だったので、記憶から少しずつ抜け落ちてしまう前に残しておきたいと思い、自分で文字起こしをする形で台本のようなものを昨年の後半に作りました。
そして今回、こちらで俺節1周年をお祝いする企画が持ち上がったと伺い、自作のオリジナル台本を片手に、3時間のあの舞台作品を振り返りながら綴ってみることで、改めてこの作品の温かさや人や想いを痛感している次第です。
(書き進めるうちに、それぞれの役者さんの声でストーリーの脳内再生がどんどん進んでしまったので、途中からセリフを辿る方法に切り替えていく形式にシフトしていきました。そのため妙にボリュームアップしてしまい申し訳ありませんでした。とはいえ、この素人の拙い文章を最後まで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。)
折しも先日、主演のコージ役をつとめられた安田章大さんは、この作品に出演される前に大きな手術を受けられていたことを発表なさいました。昨年の2月上旬といえば、この舞台のチケット先行申込が始まっていた頃です。医学的な知識は私にはありませんが、それでも開頭手術の後すぐに何事もなかったかのように日常生活を送るだけでも大変、ましてや舞台のハードな稽古をこなすというのは、素人レベルで考えても、明らかに容易ではないと想像がつきます。演目そのものも3時間という長丁場であり、歌唱シーンもあれば殴り合うようなシーンもある。きっと稽古の過程でも、安田さんは限界を超える中で日々過ごしておられたと思います。場合によっては代役を・・あるいは延期で・・といったプランも、もしかしたら現場では出たのではなかろうかと勝手ながら推察いたします。
それでも安田さんはこのコージという役を、俺節というこの作品を、座長として千秋楽の幕が降りるまで1ミリたりとも手を抜くことなく、また穴をあけることなく演じきられたのは、何なら命がけでこの役に向き合われたのは、安田さん本人の強い意思があってのことだと私は思うのです。むしろ、いつも役に憑依するかのような安田章大さんらしいことだと私は合点すら行きました。そして改めて今、コージは、役者としての安田章大さんにとって代表的な役となるに違いない、と確信しています。安田さんご本人も同じように感じておられたらどんなに良いだろうとも思っています。
私が日々会場でお見かけしただけでも錚々たる芸能関係の方々が何名もいらっしゃっていましたが、各所より大絶賛の反響が聞こえた以上、再演あるいは映像化といった要望が出ることもまた必然でしょう。
もちろん様々な意見や考え方があり、人それぞれで異なるということ、あるいは必ずしも皆が同意見にはなり得ないということは、普通のことだと私も理解しています。とはいえ、少なくともこの何ヶ月もの間にこのサイトやこのサイトの主たる管理者でいらっしゃっる土田先生の奥様に対し、誹謗中傷が続いたようなことは、金輪際なくなってほしいと心から思っています。
今、安田章大さんは何を思っておられるのでしょうか。もしこのサイトもご覧になっているのであれば、どうか安田さんも含め、ひとりでも多くの人に届いてくれという気持ちも込めて、あえて書かせていただきます。
安田さんはあの1ヶ月間、いやそれ以上の期間、座長として駆け抜け、あれほどまでの素晴らしい結束力の強いカンパニーを引っ張ってこられた。これは確固たる事実です。
たとえ「心配する気持ち」がきっかけであるとしても、誰かのせいにして責め続ける行為や、それがエスカレートして誹謗中傷が暴徒化する場合、それは安田章大さんのあの血の滲むような努力の結晶をも全否定するに他ならない、と私には思えてなりません。
それは自らの命をかけてでも安田さんが守りたかったもの、それがコージ・・そして俺節だったと、あの作品を見続けた中で痛感しているからです。
骨折も完治せぬままコンサートツアーに向けて動き出そうとされている安田さんには、尊敬の念しかありません。
本当に強い方だと思います。無理だけはして欲しくないと願う一方で、この方のファンでよかったと心の底から感じ、そして誇りにも思っています。
原作ファンの方には、テレサの国籍すら違うことなども含め、昨年の舞台化そのものに否定的な方もおられるかもしれません。
でも私はひとりの「舞台版俺節」のファンとして、またたくさん見届けることが叶った幸運なファンのひとりとして、もう一度あのカンパニーの皆様が集結される日を心待ちにしていたいと思っています。あるいは怪我と病が根治した時に、安田章大さんの「帰る場所のひとつ」が、この「舞台版俺節のコージ」であれば・・・と思うのです。
もちろんその時は誰ひとりとして欠けることなく。
コージもオキナワもテレサも大野さんも北野先生も行代ちゃんもナホ先生も戌亥さんも。アイリーンも橋本さんもシャオも。ママさんも陛下も覗き魔さんも放火魔くんも人殺しのおっちゃんも。大橋マネージャーも米村主任もマンボ好塚さんも。ダメダメ上司さんも歯痛のチンピラさんもプロデューサーさんも。二日酔いの警官さんも女装の付き人さんもイベントのADさんも、猫抱いてた人もサンドイッチ工場でテレサを庇ってくれた主婦さんもプラネット青さんも。そして当然福原さんや土田先生の奥様や江上さんも!!!
ただこの作品が好きだからもう一度みんなに会いたい。
理由は単純明快、ただこれだけです。
長くなりましたが・・最後はこの2文字で締めくくります。
(`д´)へばっ!!