思い出再現劇場

「1年経っても色褪せない俺節forever」


【第7夜】

19)テレサとの別れ 

 

夢の中でもテレサと幸せなひとときを過ごしているのか、嬉しそうに股間を押さえる仕草すらも垣間見れたコージの寝起き。

ただ、側にはなぜか制服警官人の姿。

起きた瞬間何が起きたか理解できないまま

「私たちはテレサさんに・・・」

そう言いかけた警官に真っ向から敵意むき出しになるコージ。

そこにスーパーの袋を持って帰宅したテレサは明らかに落ち着いていて、暴れてもがきながらテレサを逃がそうとするコージだけが人違和感のある動きをしている、そんな感じでした。

要は「自ら不法滞在であることを申し出ます。自分は法の裁きを甘んじて受けます。その代わりと言っては何ですが、一緒に暮らしたコージにはこれまで私を匿ったことによる罪が問われないように配慮してほしい。」という、これまたテレサの自己犠牲型の優しさでした。

 

まぁコージのことだから、テレサのビザの状態といったことに関しては多分正確に理解はしていなかったと思います。でも就労ビザどころの話ではないと思われる状態は明らかに入管法に違反している。実は把握していたにも関わらず「対価」を要求して有耶無耶にしようとした姑息な米村課長に比べれば、コージに関しては罪に問われた時の度合いは軽いでしょうけど、それでも犯人蔵匿罪が適用される・・のか??という場面かと思います。

 

パニックになっているコージとは対照的に

「お米と缶詰、あとレトルトカレー、買ってきたから」

まるで日常と何も変わらぬような落ち着いたテレサ。

「わかんねぇよ・・なにこれ??」

そりゃそうなっても仕方ない。昨晩初めて愛する人と大事な時間を過ごせたのに起きたらこんなことになっている。天国から地獄とはまさにこの事。

 

「コージの迷惑になりたくないから」

「なにが迷惑よ???ねえ、どんな迷惑がかかるのよ??ねぇ・・・迷惑だっていいよ。テレサのいいも悪いも全部背負うつもりで・・」

「それがダメなの!ワタシのために何か頑張るコージ見たくないの!!コージは自分のためだけに・・生きて! 」

そう言って身につけていた十字架のネックレスをコージの掌に握らせる。

「昨日のことは、いい思い出になったよ??アリガトウ・・・コージ」

十字架を握りしめたコージの手に優しくキスをして、笑顔で警官と去るテレサ。

我に帰り、タンクトップとトランクス姿のままテレサを追いかけて部屋を飛び出すも、

「この顔、この笑顔。もしもこれから、コージがワタシを思い出してくれる時があるなら、この顔で思い出して!!悲しい顔、忘れてほしい」

そう言ってコージの額に最後のキスを。そしてゆっくりと扉の外に出るテレサ。程なくして壁を叩き

「売れてね!!コージ!立派な歌手になってけろだ!」

さらにまだ追うコージは警官の人に鳩尾を殴られて布団に倒れ込み、その隙にテレサたちは去ってしまう。

 

突然の別れ。

大事な人を守るための自己犠牲、それしか選択肢がなかったのか??と思うと、悲しすぎる展開。

コージの嗚咽が響き、そして流れてくる曲。それは♪引越しをするなら教えてよ 

泣きながら、

「くすみ・・かけた・・この部屋で・・・過ごす・・時は・・・終わり・・・」

でも少しずつ歌声が力強くなってゆく。

「別れ・・決めた・・この期にも・・いさぎ・・悪いと・・思うけど・・」

そして起き上がり、前を向き

「明日に・・なれば・・戻らなーい 二度と・・だから今夜は・・・笑ってみせてよぉーー」

手を真っ直ぐ飛ばしてより力強く、引き締まった小さなその身体から力と想いが迸るように歌い続けるコージ。

「引越しをぉーーするならぁー教えてよぉーー どんなぁーー遠くへ 離れてもぉーー」

「今はぁ 角が立ーつこーともー 後で 話せる・・・時があるだろう・・」

歌い上げ、手から十字架がこぼれるように落ち、悲しみのコージの姿の後ろには大きめのボリュームで間奏が流れ、そして暗転。切ない。

 

 

20)ナホ先生とのレッスンに明け暮れるコージ 

 

上手の上、レッスンスタジオで、♪引越しをするなら教えてよ の伴奏、そのクライマックスを弾くナホ先生。

「いいよいいよ~!コージくんすっごいよくなった!マル!マル!白鶴~?」

「・・・マル?」

「そ~う!!!」

楽しそうにはしゃぐナホ先生。(この場面は毎回"なんとかマル"繋がりでナホ先生のアドリブコーナーと化していた、お気に入りシーンでした。)

そんなはしゃぐ人とは対照的に冷めた顔で眺める行代。「コージくん変わったね!」

「・・そうかな?」

標準語のイントネーションに変わってしまったコージは

「より多くの人に伝えるには訛りなんて余計なものだからね!」と。

さらには行代に対しても

「ちゃんと練習してくださいよ」

と、前回のレッスンスタジオでのコージとはまるで人が変わったようでした。

 

二日酔いで気だるい行代に

「コージくん、一生懸命変わったんだよ。見てっ!このジャケット!麻よ、麻っ!!ヘンプっっ!!ちょっと、みせたってぇー!!着てみせたってぇーー!!」

ナホが肩に掛けたジャケットに颯爽と腕を通し、渋いキメ顔で遠くを見遣るコージ。

「すご~い、どこからどう見ても都会人だねぇー!オメガトライブかと思ったーーっっ」

(アラフォー以上でないと多分ついていけないであろう、オメガトライブというパワーワード。ナホ先生、相変わらず飛ばしますよね・・)

手放しにコージのことが大絶賛なナホ先生とは対照的に、至って冷静な行代は

「ねえ?歌い方も変えた?」

と尋ねる。

「あ、わかっちゃったぁー?!」

またもや標準語のイントネーションのコージ。

まるで憑き物が落ちたかのようなさっぱりした表情で

「・・・背負うものがなくなって身軽になったんです」

と返すコージ。

女と別れた男が言いがちなセリフだ!大チャンス到来!!と俄然張り切る積極的なぶりっ子ナホ先生を嗜める行代に

「今は、自分自分って集中して頑張ろう、って。」

そう大人な回答をするコージ。

 

テレサが出て行ってからどのくらいの時間が経ったのか。それはわからないけれど、コージなりに目の前の現実を受け止め、「売れてね!!」という最後のテレサの願いを叶えるために、かつての流しのたまごではない、今はひとりの歌手のたまごとして、今は奔走するしかないのかな、と思えた場面でした。

デビューできるという喜び。デビューができたら離れたところにいてもきっとどこかでテレサが見てくれる・・そんな思いもあったのかもしれない。改めて行代から、どんなデビューを想像していたか聞かれ、さらには思ってたのと違うでしょ?とまで言われたけれど、それでも今はいい。テレサのため、そしてオキナワのためにも今は頑張るしかない、そんな思いを抱えていたように思います。

そんなコージに戌亥さんの言うところの「隙間の多さ」を見た行代は

「やれやれ、私も本気出さなきゃって気になっちゃうよ。よろしく、相棒!」

そう言ってくれたのでした。

 

少しずつコージが歩みだした頃、テレサはというと取調室での日々。でも外国人ブローカーを撲滅させるために全面協力している模様。(裁判前ではあるものの、いわゆる司法取引、ですね!これは)

そして北野邸の座敷牢に閉じ込められたままのオキナワ。

「おい、北野のやつ、どういうつもりだよ!立派な監禁だぞ!」

「先に恐喝してきたのはそっちでしょう!」

「いいから北野を出せよ!」

「先生は地方公演中でいらっしゃらないんですっ!」

付き人と罵り合うような場面、そして

「これは北野先生からです。ご自分の部屋の掃除くらい、ご自分でなさってください!」

と行って箒を座敷牢に投げ入れる別の付き人。

オホホホホーーと去って行く付き人を尻目に

「誰が掃除なんかするかよっ!・・とはいえ、暇だからやっちゃうよーーー」

そう言って掃き掃除を始めるオキナワは、かつてのリーゼントヘアーではない、少し物悲しい姿でした。

 

 

21)デュエットデビュー幻となり失意の日々を送るコージ 

 

「わーっしょい!わーっしょい!!」

掛け声とともに同じ服装の男たちに胴上げをされる戌亥さん。

座敷の上座にはいかにも成金といった雰囲気の男が横に若い女を従えて鎮座している。行代とコージのデビュー曲にCMのタイアップをつけてくれた引越し屋の社長で、今まさに接待中、そんな場面でした。

とにかく社長!社長!!という感じの戌亥さん、そしてお酌に徹する行代。何をどうしていいのか分からずただニコニコするコージ。

 

二代目社長である彼はかつての行代のファンで、今回こうして行代と仕事ができる事実、今まさにお酌をしてもらっている現実に感極まっているものの、いざ歌のこととなると「歌詞が暗い」「デュエットって・・」と少しずつ不満が噴出。なんとか取りなすべくフォローする戌亥さんの言葉にも納得がいかず、何よりも

「そもそもあの子、必要?なんか地味だしさぁ??」

とコージを全否定。

こう言われてはコージも苦笑いするしかなく、戌亥さんに促されてお酌で挽回しようとするも、少し酔いの回った社長に、見事にぶん殴られてしまう。それを見てケラケラと笑う社長の女。

く、悔しい・・でも接待だから!!そう言い聞かせるように堪える人と、嘲笑うような人。

 

突如「着ぐるみでいこうか??」

驚く人のことなど構うことなく、自社のマスコットキャラクターであるカブトムシのブットくんの着ぐるみをコージに着せようと言い出す社長。

それでも気持ちをグッとこらえて着ぐるみ案をも受け入れようとするコージに、機嫌を持ち直した社長はとうとう口を滑らせてしまう。

CDはあくまでもおまけで、メインは行代のヌード写真集」それが此度の契約の真相。

「ちょっと待ってください!!!脱ぐとか脱がないとか、何の話をしてるんですか??」

露骨に不信感をあらわにしてしまうコージ。

「だからお前には関係ないって・・」

「誰が脱ぐんですか!?」

社長の前だということをすでに忘れてしまったかのようなコージに対して、当の社長もどんどん不快感が増して行く。そして社長の女はというと、コージは行代の男なのでは??と勘違いの勘ぐりを始めてしまい、行代大好き!の社長の苛立ちが頂点に達してしまう。

 

「こういうのって恩を売ってあわよくばタレントだって抱けちゃいます!っていうためにやってんだからさぁー!そのためにさぁ、俺でも抱けそうな落ち目のタレント必死で考えてさ、それで選んだ行代ちゃんなんだからさー」

あの時の米村課長に通じるようなクズ社長の言葉に

「なに言ってるんだべ、あんた!」

ついにコージが爆発してしまう。

「私がいいって言ってんだから、あんたは黙ってて!」

行代が止めるも時すでに遅し。

「こんな男のために脱ぐのが行代さんの行く道ですか?」「それがやりたいことなら何にも言いません。それが、歳の頃からこたつの上で見た夢なら!!だども!!!!」

「コージよ!今世間ではヘアヌードが解禁されたばっかで流行りがきてんだよ!」

戌亥さんも止めに入るものの

「流行り廃りの話をしてねえっすよ!!惚れた腫れたの話です!!!!」

 

すでに侮辱されたと怒りが収まらなくなった社長の指示で、引越し作業員姿の男たちに担ぎ上げられるコージ。

しかし腹筋と背筋でぐいっっと起き上がったコージこそもう止まらない。

「そんなのおかしいべ!そもそも惚れた女なら、あんたが止めるのが筋でしょう!」

「惚れた女だからだろうがよぅ・・惚れた女だからこそ、必死で魔法かけ続けてんだよ・・・」

コージの人となりを理解している以上、事前に事情説明をしていなかったから、もしかしたらこれは戌亥さんの戦略ミスだったのかもしれない。でも着ぐるみだろうがローカルCMだろうが、一度は掴んだ夢への通過点。行代にとっては再起をかけたワンチャンス。

 

「キレイにお化粧してもらってさぁ、キラキラの衣装着せてもらって、満員の客席でちやほやされて・・・魔法の時間でしょ?田舎から出てきた女の子がさぁ、12時過ぎても輝き続けるためにはさぁ、ヘアーのひとつも出さなきゃ無理なんだよ!!!!!!」

「本当に魔法なら、そんな必要なんてないでしょ!」

コージの言葉に戌亥さんは少し穏やかに答える。

「じゃあ・・・呪いだな・・」

「いくつになってもスポットライトを浴びたい、そういう呪いにかかっちゃったのよ・・・」

「夢見る、呪いだよ・・」

 

こうして全ては音を立てて壊れてしまった。行代は改めて戌亥さんとのことを再認識しただろうし、もはや、これは壊れるべくして壊れた気もするし、これでよかったのかな?とか思ったり。

そういえばこの後のムーディーなBGMは、どの公演の回から途中だったか、変わりましたね。これは何か意図があったのでしょうか・・と福原さんに尋ねたいと年越しに思っている私です。

 

【6】に戻る。            ホームへ戻る。            【8】に進む。